目次
Azure Well-Architected Framework(W-AF)とは?
Azureシステム設計の基本原則であり、以下5つの柱から構成されている。
- 信頼性
- セキュリティ
- コスト最適化
- オペレーショナルエクセレンス
- パフォーマンス効率
信頼性と可用性の違い
- 信頼性:システムが故障しにくい度合いを指し、平均故障間隔(MTBF)で評価される
- 可用性:システムが稼働できる状態をどれだけ維持できるか、つまり稼働率で評価される
"4.オペレーショナルエクセレンス"とは、オペレーション(業務の管理・運用)の効率・向上を目指すことによって、競合他社が真似できない、その企業独自の優位性を保つ状態のことをいう。
また、5つの柱に加えて一般的な設計原則があり、"アーキテクチャー進化を実現"、"データを使用した意思決定"、"教育と有効化"、"自動化"の4つをアーキテクチャー全体で考慮する。更に、クラウドに移行すると"共同責任のモデル"が導入される。クラウドプロバイダーが提供しているレイヤー(サービス)のデータセンターの稼働維持、ネットワーク接続などに関してユーザーは考えなくてよいため、アプリケーションの実装などに専念できるようになる。
詳細
信頼性
インシデントの影響がない状態でシステムが要求を処理継続すること。そのために、インシデントの影響を迅速かつ自動的に除去する仕組みが必要である。たとえば、各コンポーネントに高可用性を統合して局所的な障害をアプリケーションで確実に処理する、単一障害点を排除した設計でインフラストラクチャーのメンテナンス影響を最小化する、といった方法が考えられる。
セキュリティ
組織が使用、保存、送信するデータを保護すること。ここではいくつかの観点を提示するだけに留める。ひとつは、法的要件および規制上の要件であり、所在地や業界によってもデータの取り扱いのルールが異なる。また、多層防御という考え方もある。セキュリティ態勢を強化するための階層型アプローチである。
コスト最適化
組織が投じる費用が最大の効果で使用されるようにすること。具体的には、資産を保有して減価償却をするモデルからクラウドを利用することで資産を持たない従量課金モデルに移行することで、適切なリソースと適切なサイズを利用することが可能になる。結果、クラウド利用することによりコストの最適化が行われ、ビジネスの成果に直接影響を与える。
オペレーショナルエクセレンス
ビジネスの変化に迅速に対応すること。そのために運用上の機能強化を進めていくことになる。代表的な例としては DevOps と継続的インテグレーション、自動化(Infrastructure as Code によるデプロイ)、アプリケーションのユーザーエクスペリエンス向上とテストによる品質改善などがあげられる
パフォーマンス効率
アプリケーションが利用するリソースをパフォーマンス要件と合わせること。そのためにピークパフォーマンスをどのように確保するかという検討が必要である。実際にやることの例として、リソースのスケーリング、ボトルネックの特定と最適化、アプリケーションコードの最適化などがあげられる。
注意点
上記はあくまで参考であり、現状を認識し今の状態を把握できればよいため、W-AFを全て受け入れる必要はない。
W-AFによって抽出された課題は"重要性"、"優先順位"、"必要性"を現場でのビジネス要件を踏まえて自身(チーム)で検討する。ただし、見つかった事項は他の項目とトレードオフの可能性があることは注意しなければならない。(性能、コストなど)
W-AFレビューの進め方
チェックリストに照らし合わせて現状を確認していきます。上記で述べたとおり、全てがチェックリストの通りになっている必要はなく、リスクを認識し、その後の改善点を考えることが重要となる。W-AFレビューでは質問事項が多岐にわたるため、関係者(各分野のエキスパート、運用担当者、プロジェクトマネージャーなど)を交えてW-AFレビューを行い、W-AFレビューの回答の中では「なんとなくそうなった」もしくは「わかっているが理由があってあえてそうしている」のどちらかを明確にする。さらにMicrosoft Cloud Adoption Framework(以下、CAF)と同様に1回だけではなく複数回実施することが重要である。設計段階開始、途中、完了、リリース前など複数回行う、対象となるアーキテクチャーにより期間は異なるが定期的に行うことで現状確認と改善点を見つけていくことが重要である。
また、ワークロードの改善を運用プロセスに組み込むことが重要です。これは「Well-Architected 推奨プロセス」として Microsoft社から紹介されている。特にワークロードの評価を行う部分にはW-AFレビューだけでなく様々なツールが用意されている。
CAFとは、企業がクラウドを効果的に導入・活用し、成功を収めるためのガイダンスとベストプラクティス集
また具体的な設計例については、W-AFに基づいたAzureランディングゾーン(Azure Landing Zone:ALZ)というアーキテクチャが定義されています。
Azureランディングゾーン(ALZ)について
クラウド導入初期の課題を解消し、Azure環境を効率的かつ安全に構築・運用するためのガイドラインとなるのが「Azureランディングゾーン(ALZ)」です。
Azureランディングゾーンは、環境の設計や準備の段階で活用できるフレームワークを提供し、企業がクラウド導入の初期段階から最適なアーキテクチャを採るための支援を行います。
新規プロジェクトの立ち上げやオンプレミスからの移行、エンタープライズ環境の構築時の負担を軽減し、迅速な市場投入やリスクの軽減を実現します。
Azureランディングゾーンとは
クラウド導入にはいくつかの課題があり、例えば、"初期設定の複雑さ"、"一貫性の欠如"、"セキュリティのリスク"などがあげられるでしょう。こうした課題を解決し、効率的で安全なクラウド環境を構築するためのガイドラインが"Azureランディングゾーン"です。
Azureランディングゾーンは、Microsoft Azureでクラウド環境を効率的かつ安全に構築・運用するための最適な手法と標準的なアーキテクチャの例を提供するフレームワークです。
Microsoftが提供するこのフレームワークを活用することで、簡単にかつ適切なクラウド基盤を構築することができます。
https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/cloud-adoption-framework/ready/landing-zone