Azure クラウド 技術

Azure Well-Architected Framework（W-AF）についてまとめてみた

2025年2月12日


Azure Well-Architected Framework（W-AF）とは？

Azureアーキテクチャを評価するためのフレームワーク。Azureシステム設計の基本原則であり、以下5つの柱から構成されている。

  1. 信頼性
  2. セキュリティ
  3. コスト最適化
  4. 運用上の優秀性
  5. パフォーマンス効率

信頼性と可用性の違い

  • 信頼性：システムが故障しにくい度合いを指し、平均故障間隔（MTBF）で評価される。（簡単にいうと、壊れにくさ）
  • 可用性：システムが稼働できる状態をどれだけ維持できるか、つまり稼働率で評価される。（簡単にいうと、使える時間の長さ）

運用上の優秀性とパフォーマンス効率の違い

  • 運用上の優秀性　　：運用の質を高めて安定稼働させる。（運用の仕組み）
  • パフォーマンス効率：リソースを最適に使って速く動かす。（システムの動き）

また5つの柱に加えて、一般的な以下4つの設計原則があり、アーキテクチャ全体で考慮する必要がある。

  1. アーキテクチャー進化を実現
    • 以下を回すことで、システムが陳腐化せず、ビジネスと共に成長する。
  2. データを使用した意思決定
    • W-AFに準拠しているか、改善点はどこかを数値で判断する。
  3. 教育と有効化
    • W-AFを理解し、組織に浸透させる。
  4. 自動化
    • W-AFのベストプラクティスを強制し、労力を減らす。

更にクラウドに移行すると"責任共有のモデル"が導入される。クラウドプロバイダーが提供しているレイヤー（サービス）のデータセンターの稼働維持、ネットワーク接続などに関してユーザーは考えなくてよいため、アプリケーションの実装などに専念できるようになる。

詳細

信頼性

システムが要求を処理継続することを指します。そのため、インシデントの影響を迅速かつ自動的に除去する仕組みが必要であり、例えば各コンポーネントに高可用性を統合して局所的な障害をアプリケーションで確実に処理する、単一障害点を排除した設計でインフラストラクチャーのメンテナンス影響を最小化する、といった方法が考えられます。

簡単にいうと「壊れにくさ」を指します。

セキュリティ

組織が使用、保存、送信するデータを保護することを指します。

所在地や業界によってもデータの取り扱いのルールが異なり、また多層防御という考え方もあり、セキュリティ態勢を強化するための階層型アプローチです。

簡単にいうと「不正アクセスや脅威から守ること」を指します。

コスト最適化

組織が投じる費用が最大の効果で使用されるようにすることを指します。具体的には、資産を保有して減価償却をするモデル（オンプレ）からクラウドを利用することで、資産を持たない従量課金モデルに移行します。結果、適切なリソースと適切なサイズのみを利用することができ、クラウド利用することによるコストの最適化・ビジネスの成果に直接影響を与えます。

簡単にいうと「無駄なコストを減らす設計と運用」を指します。

運用上の優秀性

ビジネスの変化に迅速に対応すること、そのために運用上の機能強化を進めていくことを指します。代表的な例として、 DevOps と継続的インテグレーション、自動化（Infrastructure as Code によるデプロイ）、アプリケーションのユーザーエクスペリエンス向上とテストによる品質改善などがあげられます。

簡単にいうと「効率的で安定した運用管理を行うこと」を指します。

パフォーマンス効率

アプリケーションが利用するリソースをパフォーマンス要件に合わせることを指します。例として、リソースのスケーリング、ボトルネックの特定と最適化、アプリケーションコードの最適化などがあげられます。

簡単にいうと「要求に応じた性能を発揮すること」を指します。

注意点

上記はあくまで参考であり、現状を認識し今の状態を把握できていればよいため、W-AFを全て受け入れる必要はございません。

W-AFによって抽出された課題は、重要性、優先順位、必要性を現場でのビジネス要件を踏まえて自身（チーム）で検討すること。ただし、見つかった事項は他の項目とトレードオフの可能性があることは注意しなければなりません。（性能、コストなど）

W-AFレビューの進め方

Microsoftが公開しているチェックリストに照らし合わせて現状を確認していきます。

上記で述べたとおり、全てがチェックリストの通りになっている必要はなく、リスクを認識し、その後の改善点を考えることが重要です。W-AFレビューでは質問事項が多岐にわたるため、関係者（各分野のエキスパート、運用担当者、プロジェクトマネージャーなど）を交えてW-AFレビューを行い、W-AFレビューの回答の中では「なんとなくそうなった」もしくは「わかっているが理由があってあえてそうしている」のどちらかを明確にします。さらにMicrosoft Cloud Adoption Framework（以下、CAF）と同様に1回だけではなく複数回実施することが重要となります。（設計段階開始、途中、完了、リリース前など）

対象となるアーキテクチャーにより期間は異なるが定期的に行うことで現状確認と改善点を見つけていくことが重要となります。

また、ワークロードの改善を運用プロセスに組み込むことが重要です。これは「Well-Architected 推奨プロセス」として Microsoft社から紹介されており、特にワークロードの評価を行う部分にはW-AFレビューだけでなく様々なツールが用意されております。

Microsoft Cloud Adoption Framework（CAF）とは？

Azureにおけるクラウドの採用を成功させるためのガイダンスを提供するフレームワークです。

このフレームワークは、Azureの利用における「戦略」「設計」「準備」「移行」など、工程の各フェーズにおいて理解しておくべきポイントを整理しています。

特に「準備」で説明されているランディングゾーンアーキテクチャはAzure上にシステムを展開する際の基本的なアーキテクチャとして参考になります。

ポイント

設計をどこから手をつければよいかわからないという場合、まずはCAFのランディングゾーンを参考することがおすすめ

Azureランディングゾーン（ALZ）とは？

クラウド導入初期の課題を解消し、Azure環境を効率的かつ安全に構築・運用するためのガイドラインとなるのがAzureランディングゾーン（ALZ）です。 
Azureランディングゾーンは、環境の設計や準備の段階で活用できるフレームワークを提供し、企業がクラウド導入の初期段階から最適なアーキテクチャを採るための支援を行います。

新規プロジェクトの立ち上げやオンプレミスからの移行、エンタープライズ環境の構築時の負担を軽減し、迅速な市場投入やリスクの軽減を実現できます。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/cloud-adoption-framework/ready/landing-zone


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