「プロ野球選手の本、面白そうだけど…自分にとって1つでも学びのある本であるといいな」
正直、読む前はそう思っていました。
小学校では野球チームのキャプテンを務め、4番・ピッチャーとしてプレーしていました。中学でも野球を続け、今でも野球好きです。だからこそ菊池雄星さんの著書『こうやって、僕は戦い続けてきた。』には自然と手が伸びました。
ただ同時に、「メジャーリーガーの思考法が、マネージャー兼クラウドエンジニアの自分に使えるとは思えない」という気持ちも半分ありました。
この記事は、そんな風に思いながら手に取った自分が、読み終えたら「これは自分のために書かれた本だった」と感じるまでの話です。本書にはメンタル・習慣・人間関係・目標設定など、著者が実践してきた77の習慣が詰まっています。チームを率いながら「頑張り方がわからない」「不調をどう乗り越えるか」と感じているマネージャー・エンジニアの方に、ぜひ届いてほしい内容です。
目次
「どうやって頑張るか」——野球も仕事も、問いは同じだった
本書の冒頭、菊池さんはこう語っています。
「頑張ることは当たり前。最も重要なのは、『どうやって頑張るか』を徹底的に考えること」
これを読んだ瞬間、「あ、これは自分の話だ」と思いました。
チームのマネジメントを担いながら、クラウド設計・構築にも関わる日々の中で、「闇雲に手を動かして消耗している」と感じることが正直あります。量をこなすことは得意でも、方向性や効率を立ち止まって考えることが後回しになりがちだと。
菊池さんが語る「心臓と頭脳を鍛えること」も、そのまま置き換えられます。 (※「心臓」=プレッシャーに動じない精神力、「頭脳」=状況を分析して最適解を選ぶ思考力)
- 心臓 → メンバーの摩擦・障害対応・経営からのプレッシャーの中で冷静でいること
- 頭脳 → チームの方針決定、クラウドアーキテクチャ選定、トレードオフの判断
この本を読んでから、「自分はいま正しい方向に努力できているか?」を振り返る時間を意識して取るようにしています。 「自分とは別世界」だと思っていたのに、読み進めるほど「これは自分の話だ」と感じさせてくれる——それがこの本の力だと思います。
中学時代の自分と、本書の一節が重なった
読んでいて思わず手が止まった箇所があります。
「激しい競争が選手の能力を向上させることもあるが、一方で結果を出すことに固執するあまり、伸びやかさや思いっきりの良さは影を潜め、型にハマることを無意識の内に選んでしまっているケースも少なくない」
中学時代の自分のことでした。
小学校時代はキャプテンとして、野球を心の底から楽しんでいました。それが中学に入り、厳しい監督のもとで「怒られないか」と常にビクビクしていました。秋季大会では自分のエラーをきっかけにチームが負けてしまい、その悔しさと重さだけが今も記憶に残っています。
今振り返ると、あの頃の自分には「思い切りの良さ」も「何事も楽しむ姿勢」もまったくありませんでした。自分の長所そのものが、恐れによって消えていたのです。
これは会社でも起きていないでしょうか。マネージャーとして、評価を気にして萎縮するメンバー、失敗を恐れて挑戦できなくなるチームを目の当たりにするとき、あの頃の自分と重なります。環境が人の「伸びやかさ」を奪わないよう設計すること——これはマネージャーの大切な役割だと、改めて感じさせられました。
感情を制する者が、パフォーマンスを制する
本書で繰り返し語られるのが、感情コントロールの重要性です。
「メジャーリーグでは、調子が良い時も悪い時も、常に変わらない態度でいられる選手こそ真に評価される」
本当に尊敬される選手とは、ただ怒らないだけでなく、過度に落ち込まない・過度にイライラしない・過度に悔しがらない・過度に喜ばない——感情の振れ幅そのものが小さい人のことだと菊池さんは語ります。そしてメジャーのトップ選手の中に、感情的になる人はいない、と。
マネージャーとして、これは特に響きました。好調時も不調時も態度が変わらないリーダーはチームの安心感になる。逆に感情の波が大きいマネージャーは、冷静な判断もメンバーの信頼も一気に失いかねません。
すぐに切り替えられることは、才能ではなく能力だと私は感じています。
感情コントロールの具体的な手段として、本書では「呼吸で今に集中すること」が紹介されています。菊池さんがメジャーで歩んだ4球団全てのメンタルコーチが口を揃えて「呼吸が最も基本」と言っているとのこと。読んでからというもの、「あれ、緊張しているな」と思った際には数回深呼吸する習慣がつきました。 シンプルですが、確かに心が落ち着きます。
また感情の整理には、「メモ帳に気持ちを書き連ねる」「人と話す」という外在化(※頭の中の感情を言葉・文字として外に出すこと)も有効だと菊池さんは語ります。「自分の悩みを他人に開示できることこそがメンタルの強さ」というアメリカ式の考え方も印象的でした。
「悲観的に計画し、楽観的に行動する」——マネジメントへの応用
本書で特に気に入ったフレーズがこれです。
「悲観的に計画し、楽観的に行動する」
計画段階では最悪のケースも想定し、実行段階では「ダメで元々、できたらラッキー」で動く。これを菊池さんは「結果を出すのに最も好ましい精神状態」と呼んでいます。
マネージャーとして、チームの計画を楽観的に見積もって後半に詰む——という経験は一度や二度ではありません。クラウド設計でも「完璧な構成にしなければ」と気負いすぎて動けなくなることも。計画はリスクヘッジ、行動は心理的安全性——この2つを分けるだけで、チームの動き方もメンタルも変わると感じています。今はプロジェクト計画時に「最悪のケース」も一緒に考えるようにしてます。
関連して本書に登場するのが「エクスペクテーションコントロール(期待値のコントロール)」という考え方です。最高の結果をイメージすることは自分へのプレッシャーになり、「できなかったらどうしよう」がセットでついてくる。明石家さんまさんの言葉として紹介されていた「落ち込むやつは自分に期待しすぎや」という一言が、妙に腑に落ちました。
視点を広げ、自分を客観視する
本書には「コップの中の嵐」という表現が出てきます。過剰に責任を抱え込み、視野が狭くなり、自分一人の世界で悩んでしまう状態のことです。
マネージャーとして、これは身に覚えがあります。チームの問題を一人で抱え込み、気づけば視野が極端に狭くなっていた——そんな経験が誰しも一度はあるのではないでしょうか。
抜け出す方法として菊池さんが勧めるのは、視点を一段高くすること。野球なら球団の売り上げや業界構造を理解する。マネージャー・クラウドエンジニアなら会社のIR資料を読んだり、業界全体の構造を把握する。自分のポジションが見えると、過剰なプレッシャーや認知のゆがみからも解放されやすくなります。
自己客観視の具体的な問いとして、本書ではこの2つが紹介されています。
- 「あの人だったらどうするか?」
- 「10年後に目標を達成した自分が、今の自分を見たら何とアドバイスするか?」
行き詰まったとき、この「10年後の自分」という問いを今も使っています。 目の前の悩みが急に小さく見えてくるから不思議です。
また、「人に説明できる状態にすること」も本書の重要な習慣の一つです。
「『説明する』という行為は、突き詰めると『相手の視点に立つ』ということ」
メンバーへの説明、上司への報告、顧客へのシステム提案——どれも「相手の視点に立てるか」が本質。マネージャーとして、わかりやすく伝えることはスキルである前に相手への敬意なのだと、改めて気づかされました。
失敗は共通点を持っている——だから学べる
本書は失敗についても前向きに語っています。
「成功の形は1つではない。だから誰かの真似をする必要はない。失敗する時は、多くの場合、共通点がある。だからこそ、そこから学ぶべきことがある」
失敗の共通点として挙げられるのは「分析不足」と「準備不足」。うまくいかないプロジェクトやチームの判断ミスを振り返ると、確かにこの2つのどちらかが欠けていることがほとんどです。
「結果さえ出せば、過去のことなど皆が忘れる」——過去は変えられる、今の行動が過去の評価さえ塗り替えていく、という言葉も背中を押してくれます。失敗を抱えたまま身動きが取れないとき、この視点はとても助けになります。
読了後に残った、一番大切な言葉
本書を閉じた後も、ずっと頭に残っている一節があります。読む前から紹介してしまうと先入観を与えてしまうかもしれませんが、それでも伝えたくて引用します。
「超一流と呼ばれる人々も特別な精神構造を持っているわけではなく、困難や失敗した際の『物事の捉え方』や『次に向かう行動の早さ』が違う。思い通りにいかない時には、過度に自分を責めたり、悲観的になったりするのではなく『今日はそういう日だった』と潔く受け止め、そこから何か一つでも学びを得て、またすぐに顔を上げて歩き出す。そうやって、しなやかに、そして力強く日々を積み重ねていくこと。それこそが、長い目で見れば、自分自身を成長させ、より良い結果へと導いてくれる道」
特別な才能の差ではなく、「受け止め方」と「切り替える速さ」の差——。
元野球球児として、中学時代のあの秋の試合を思い出します。エラーをした後の自分は、顔を上げることができていたか。次のプレーに向かう速さがあったか。あの頃の自分に、この言葉を届けてあげたかったと思います。
そして今、マネージャー兼クラウドエンジニアとして働く自分にも、この言葉はそのまま刺さります。チームがうまくいかない日に「今日はそういう日だった」と潔く受け止め、一つだけ学びを取り出してまた前を向く。そのしなやかさを、マネージャーとして自分自身が体現していきたいと思っています。
💡 今日からできること
本書を読んだその日から試せる最小アクションを2つ紹介します。
- 「今日感じたモヤモヤを、寝る前に3行だけメモする」 ——感情を言葉にする習慣は、思考の整理と自己理解を同時に深めてくれます。
- 「10年後の自分が今の自分にアドバイスするとしたら?」と一日の終わりに問いかける ——視点が変わると、悩みの見え方も変わります。
どちらも今夜からすぐに始められます。
まとめ
『こうやって、僕は戦い続けてきた。』から得た学びを3つに絞るとすれば:
- 「どうやって頑張るか」を設計することが、職種を超えた成長の本質。野球もマネジメントも、問いは同じだった
- 感情コントロール・自己客観視・外在化の習慣は、チームのパフォーマンスにも直結するマネージャーの実践スキル
- 超一流との差は「捉え方」と「行動の早さ」。切り替えは才能ではなく、鍛えられる能力だ
「自分とは別世界の本」だと思っていた一冊が、読み終えたときには「自分のために書かれた本」に変わっていました。野球好きはもちろん、チームを率いながら自分自身の成長にも向き合っているマネージャーの方に、特に届いてほしい一冊です。
この本がおすすめな人
- チームのマネジメントに悩んでいる、または「もっと良いリーダーになりたい」と感じているマネージャー
- 「頑張っているのに結果が出ない」「頑張り方がわからない」と感じているエンジニア・ビジネスパーソン
- 野球好きはもちろん、「自分とは別世界の本かも」と思いながらも新しい視点を求めているすべての人
この本を読んで、何が変わったか
読む前の自分は、「頑張ること」と「頑張り方を考えること」を混同していました。読んだ後の自分は、「方向は正しいか」を問い、緊張している際には深呼吸し、行き詰まったら「10年後の自分ならどうする?あの人ならどうする?」と問いかけるようになりました。小さな変化ですが、確実に日々の質が変わっています。この本が、そのきっかけをくれました。
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