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【感想】組織の違和感:違和感から始まる対話と変容

多くの組織論は「いかに効率よく人を動かすか」という手法を説く中で、本書が提示するアプローチは驚くほど泥臭く、そして本質的です。組織という大きな塊を動かそうとする前に、まずは自分と相手という「個」を深く理解すること。そのための入り口として「違和感」を捉え直すという視点は、コミュニケーションの概念を根本から覆してくれます。


「自分」というフィルターを疑うことから始まる

本書で最も印象的なのは、組織改革の第一歩を「相手の矯正」ではなく「自分の解釈のクセを知る」ことに置いている点です。

私たちは日々、無意識のうちに「刺激(話す、見る、聞くなどの情報・状況)→変換(解釈のクセ)→反応(人によって異なる言動)」というプロセスを経て、独自の解釈というフィルターで世界を見ています。自分の「当たり前=解釈のクセ」が絶対的な正解だと思い込んでいる状態では、他者との真の対話は成立しません。「なぜ私は今、この言動に違和感を覚えたのか?」この問いを自分に投げかけることは、自分の解釈のクセを浮き彫りにします。組織を動かすための土台は、スキルの習得ではなく、自分自身の観察眼を磨き、謙虚に「自分の物差し」の偏りを認めることから始まるのだと痛感させられます。

また本書では違和感を覚えた際のステップとして「違和感に気づく→複数の解釈を当ててみる→対話の糸口になる仮説を立てる」と説明があります。

「能力」ではなく「環境(相手、状況)との不一致」を見る

「あの人は能力が低い」と切り捨ててしまうのは、マネジメントにおける最も安易な逃げ道かもしれません。本書は、人のパフォーマンスを個人の資質に帰属させるのではなく、「環境」や「相手との関係性」、「状況」との間に生じている「ズレ」として捉えることを提案しています。「相手はXX力が低い」と決めつけるのではなく、「今の環境ではXXを発揮しにくい状況にあるのではないか」と仮説を立てる。この視点の転換こそが、組織開発の「助け舟」を正しく出すための鍵となります。 「人を変えるのではなく、環境を変える」。この考え方は、変えられないもの(他人の性格)に執着して疲弊するのではなく、変えられるもの(環境、相手への興味(理解)など)に注力するという、極めて実効性の高い戦略です。

「一人の天才」ではなく「一人の中の天才」を見つける

最終章で語られる「いてくれてありがとね」という精神は、単なる精神論ではなく、組織における究極の心理的安全性の形です。私たちは他者を評価する際、どうしても自分の物差しで測ってしまいがちですが、その評価自体もまた、相手や状況によって揺らぐ不確かなものです。だからこそ、特定の誰かを「天才」と崇めるのではなく、あらゆる個人の中に眠る「天才(持ち味)」を探し続ける姿勢が求められます。

最後に

「言わなくてもわかるでしょ」という甘えを捨て、違和感を対話の糸口に変えていく。(自分の当たり前と相手の当たり前の目線合わせ)

その積み重ねが、個々の役割を全うさせ、結果として組織という集合体を動かしていく。 本書は、組織に息苦しさを感じているすべての人にとって、自分自身の「見方」を変えることで世界を再構築するための、具体的かつ温かな処方箋と言える一冊でした。


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